Jesse James

1936年6月にデッカ・レーベルに4曲の自己名義録音を残したバレルハウス・ピアニスト．ピアノ，歌共に繊細なところはないがワイルドでガッツ溢れるところに魅力がある．残した曲数は少ないが傑作が揃い，以前から色々なLPでリイシューされてきた．また，「スウィート・パチューニ」の歌詞に見られる卑猥な言葉遊びの面白さも人気を集める一因である．

録音された曲の1つで監獄のことを歌っていたせいか，あるいはジェシー・ジェイムズという名前が西部劇に出て来る悪漢と同じだったせいか，レコード会社はこのジェイムズを囚人ピアニストとして売ろうとしたようだ．ある日縞々の囚人服をきた人物が監視付でデッカのスタジオにやって来てレコード作成を懇願し，という訳だ．しかし，これはどうやらレコード会社の与太であったようだ．古いブルース人名辞典なんかだとこれを受け売りしているものがあるかもしれない．

ジェイムズは自己名義録音の他，Walter Colemanという人物の伴奏も付けている．ウォルター・コールマンというのはオハイオ州シンシナティのブルースマンだ．その関係からジェイムズはシンシナティのピアニストと考えられている．シンシナティのブルースの歴史とミュージシャンを克明に追ったSteven TracyのGoing to Cincinnatiという本には，コールマン及び同一人物か親戚と見られるブルースマンの録音を色々と分析している章があって，その中でジェイムズについても考察されている．同書には長寿を保ったシンシナティのバレルハウス・ピアニスト，Pigmeat Jarretが語るジェシー・ジェイムズに関する想い出が引用されており，これを読むとジェイムズのシンシナティ出身説は間違いのないものに思えて来る．但し，同書はHighway 61という曲をジェイムズが取り上げていること等から，ジェイムズとメンフィスの結び付きについても完全には否定していないようだ．

ピグミート・ジャレットの語ることが正しく，また彼の言うジェシー・ジェイムズがデッカに録音した人物と同一ならば，ジェイムズは1955年頃ケンタッキーへ行ってしまうまでシンシナティにいたそうだ．晩年は痔のせいで座るのが大変なためあまり演奏しなかったそうだが．

CD

Document DOCD-5192, V.A., Piano Blues - Complete Recorded Works In Chronological Order Volume 1. 1927-1936 (+ Bonus Tracks 1956)

戦前にわずかの録音を残したバレルハウス・ピアニストの録音が集められている．ジェシー・ジェイムズの自己名義録音4曲がすべて入っている．その他，ジャドソン・ブラウンの自己名義録音，ジョー・ディーン，ジェイムズ・「バット」・ロビンソンと聞き物が揃っている．

Jesse James

CD

戻る

最初に戻る