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Dupree Blues


主な録音

  1. Kingfish Bill Tomlin, Dupree Blues, (Paramount, 1930年), CD:Document DOCD-5193.
  2. Georgia White, Dupree Blues, (Decca, 1935年), CD:Document DOCD-5031.
  3. Georgia White, New Dupree Blues, (Decca, 1936年), CD:Document DOCD-5301.
  4. Meade Lux Lewis, Dupree Blues, (Storyville, 1939年), CD:Delmark DD-705.
  5. Cow Cow Davenport, Betty and Dupree,(Red Recordio Disc, 1940年代), CD:Document DOCD-5586.
  6. Barrelhouse Buck McFarland, Dupree Blues, (1961年), CD:Delmark DE-788
  7. Robert McCoy, Dupree Blues, (Vulcan, 1963年),Oldie Blues OL2814 (LP).
  8. Big Joe Duskin, Betty And Dupree, (Arhoolie, 1978年), CD:Arhoolie CD 422.

Betty and Dupreeというタイトルが使われることもあり，長く歌い継がれた曲だ．上のリストに挙げた以外にも，Willie Walker, Brownie McGhee, Alec Seward, Baby Tate, Pink Andersonらが録音していて，ピアノ・ブルースというより東海岸のシンガー／ギタリストの定番になっていた感がある．

意外に思うのは，ブルース歌手が長い間に渡ってとり上げ，12小節AABのブルース形式をとっているにも関わらず，この曲は白人起源だということだ．Paul Oliverの著書Songsters and Saints（Cambridge University Press）によれば，この曲はFrank Dupreeという歌に基づいていて，これはアトランタ出身で路上新聞販売員兼伝導師であったAndrew Jenkinsという白人が作曲した曲なのだそうだ．歌のモデルになったのは1922年9月にジョージア州アトランタで絞首刑になったFrank Dupreeという人物である．Frank Dupreeの罪状は宝石店での強盗殺人らしい．歌の方ではデュプリーは恋人のベティにダイアモンドの指輪をせがまれ，宝石店に押し入った，というような物語になっている．盲目の恋を題材にした歌詞にしても，メロディーにしても哀れを感じさせるところが長い間歌われてきた理由だろうか．

上にも述べたように，この歌は東海岸のブルース歌手の間で多く歌われてきたが，アトランタで生まれた曲だったということを考えればそれも当然と思われる．上のリストに挙げた中ではジョージア・ホワイトがジョージア州出身である．多分若いときに地元で聞き覚えたのだろう．2バージョンあって，どちらもホワイトのピアノをもっと聞きたい気はするが，歌いっぷりは力強い．最初に挙げたキングフィッシュ・ビル・トムリンという人物のことは良く分からないが（おそらくこの歌が分布した地域のどこかの出身なのだろう），ごく素朴なピアノ演奏だ．ミード・ルクス・ルイスのものだけは歌がはいらず，曲のメロディーを使った異色のインストゥルメンタル版となっている．1940年代以降になってこの歌を録音したカウ・カウ・ダヴェンポート，ロバート・マッコイ，ビッグ・ジョー・ダスキンの3人はアラバマ州の出身である．アラバマ州辺りでも最も良く聞かれるブルース曲の一つであったのかもしれない．