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New Orleans Hop Scop Blues


主な録音

  1. Sara Martin, New Orleans Hop Scop Blues, (OKey, 1923年), CD:Document DOCD-5396.
  2. Clarence Williams' Blue Five, New Orleans Hop Scop Blues, (OKey, 1923年), CD:Classics CD 679.
  3. Bessie Smith, New Orleans Hop Scop Blues, (OKey, 1930年). CD:JSP 930.

「ニュー・オーリンズ・ホップ・スコップ・ブルース」はブギウギのベースパタンを持つ12小節ブルースとしては初めて楽譜に書かれ，出版された曲だと言う（Silvesterの本による）．出版されたのは1916年というから，「最古のブギウギは何か，いつ頃成立したスタイルなのか」を想像する手掛かりとして興味津津な曲である．

昔のピアノ・ブルースの噺になると，テキサス出身の有名なトーマス一家というのが話題になる．この曲はトーマス一家のピアニストで音楽出版社を経営していたジョージ・W・トーマスの作だ．

ニューオーリンズ出身のピアニスト兼バンドリーダーのクラレンス・ウィリアムズは1911年頃ジョージ・W・トーマスがこの曲を演奏するの聞き，そのとき初めてブギウギのベースを持った曲を聞いたのだそうだ．ウィリアムズは1923年にその権利をトーマスから買い取り，レコードに録音するようになった．最初は，結構売れていたと思われるクラシックブルース歌手サラ・マーチンに歌わせ，自身はピアノを伴奏を付けた．その録音を聞くと，比較的調子の良い，ややポピュラーっぽいブルース曲という感じだが，一部ではあるがブギウギのベースパタンが使われている．

そのすぐ後に，ウィリアムズは自身のバンドでインストルメンタル曲としてこの曲を録音する．これは古き良き時代のジャズだ．それでもやはりウィリアムズ自身のブギウギ・ピアノを部分的に聞くことができる．

ウィリアムズはベッシー・スミスのセッションにも参加していて，やはり部分的にブギウギのベース・フィギュアで曲を駆動している．しかし，さすがに貫禄ある声だよ，ベッシー・スミス．リイシューは色々あると思うが，意外にクリアーな音質で聞ける．

ブギウギ・ピアノとのつながりを感じさせる録音はこの３つくらいかもしれないが，クラレンス・ウィリアムズは「クラレンス・ウィリアムズとそのウォッシュボード・バンド」名義でも再録音しているし，ジャズ形式ではあるけれどリチャード・M・ジョーンズなどもやっている．

ブギウギ・ピアノの母体として，テキサス州東部のピアニストの間で演奏されていた「ファスト・ウェスタン」というスタイルがあった，という説明を時々見掛ける．ヒューストン出身のジョージ・トーマスはファスト・ウェスタンも知っていただろう．「ニュー・オーリンズ・ホップ・スコップ・ブルース」はファスト・ウェスタンを都会的な音楽に応用したものではあるまいか．

サラ・マーチンのものにせよ，クラレンス・ウィリアムズのものにせよ，ブギウギを満喫するという曲ではないが，このスタイルの成立年代を知るヒントになる曲として忘れられない．